放射線による高分子変化
高分子材料に放射線が照射されると、電離や励起などの反応が発生し、分子中にラジカルが生成されます。そのラジカルが、酸素と反応し、過酸化ラジカルが生成され、酸化反応が進んだり、ラジカル同士が結合して架橋したり、様々な間接作用を引き起こして、材質に変化を及ぼします。
1.強度変化
架橋反応と分解反応によって強度が変化します。これらの反応は競合し、どちらが起こりやすいかは材質により異なります。架橋反応が多いと強化し、分解反応が多いと劣化します。
2.照射臭
ラジカルが酸素などと反応し、揮発性ガスが発生します。照射臭の原因は、放射線照射によって発生したラジカルが酸素などと反応し、アルデヒド、ケトン、カルボン酸等(主に酢酸)の揮発性物質が検出されることによります。低濃度のため、人体に影響はありません。
例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)製品に50kGy照射した場合、酢酸とアセトンの発生が最も多く、次いでt-ブタノール、酪酸、プロピオン酸等が検出されます。ポリプロピレン製品の場合、ポリエチレンと同様に酢酸、アセトン等が検出されます。その他、フッ化物や塩化物の場合は放射線分解によってフッ素ガスや塩素ガスが検出されます。
3.着色

材質によっては着色がみられ、一般的に、線量が高いほど黄色の着色度合が大きくなります。着色の原因はポリマー中に生成されたポリマーラジカルによるものと、放射線分解生成物によるものがあります。
また、プラスチックに含まれる添加剤によって着色影響が生じることもあります。これには酸化防止剤として使用されるフェノール系添加剤による着色反応が知られています。
欧米ではガンマ線照射による着色はガンマゴールドと呼ばれ、ガンマ線滅菌されたことの証とされています。
(例)アクリルの着色度
(参考:放射線滅菌における医療機器材料の選定方法より)